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工場長:皆さん、こんにちは。屏菸1936文化基地へようこそ!私は屏東葉たばこ工場の工場長です。葉たばこの専売政策が実施された日本統治時代に、この工場が建設されました。「1936」はこの工場が誕生した年を意味しています。産地で、たばこの原料になる葉たばこの買い付けをして、初歩的な加工を行ってから、海外の多くのたばこ工場に販売しました。台北市の松山たばこ工場へも搬送され、そこでは紙巻たばこが製造されました。それ以来、67年の間、葉たばこ工場は栽培技術の指導や葉たばこの買い入れによって、たばこ農家の暮らしを支え続けてきました。それに、近所の人たちも工場で一緒に働いていたので、それが地域全体のつながりを深めたんです。
日本統治時代、台湾には「葉たばこの五大産地」と言われる地域がありました。宜蘭、台中、嘉義、屏東、花蓮のことです。1970年代になると、「屏東菸区」と呼ばれる高雄と屏東の葉たばこ産地では、葉たばこ畑の耕作面積が飛躍的に拡大し、台湾最大の契約産地になりました。しかし、台湾では1987年に外国産たばこの輸入が解禁され、2002年に台湾がWTO─世界貿易機関に加入すると、国内の葉たばこは価格競争に敗れてしまいました。それに加えて、たばこによる健康被害も重視されるようになり、台湾政府が禁煙政策を進めたことから、たばこの販売量も次第に落ち込み、屏東葉たばこ工場も2002年に操業が停止され、歴史の1ページにその名が刻まれることになりました。そして2017年に、工場エリアの主要な工業施設の一部が法定歴史建築として登録されました。「ビーッ」という音が鳴ったら、屏東葉たばこ工場の黄金時代へと、皆さんをご案内しましょう!
物料課課長:工場長、たいへんです!倉庫の葉たばこがなくなってます!
工場長:なんだと!?どうすりゃいいんだ!そうだ、君たち物料課の新入社員の葉くんは推理小説のファンで、謎解きが得意だそうじゃないか。
物料課課長:ええ、葉さんはなかなかたいしたものですよ!
工場長:じゃあ、葉くんに葉たばこ実験室まで来てくれるように伝えてくれ。
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葉さん:工場長、葉です。お呼びでしょうか。
工場長:実はさっき気がついたんだが、葉たばこが消えてしまったんだよ。葉くんは謎解きが得意だそうだね。みんなが「名探偵の葉さん」って呼んでるそうじゃないか。だから、葉たばこ探しを手伝ってもらいたいんだよ!
葉さん:いやいや、とんでもないです。僕は新米なので、葉たばこ工場のこともまだよくわかっていませんけど、がんばります!あのう、なくなってしまったのは何の葉たばこですか?
工場長:この壁を見てごらん。これが屏東で栽培されていた3種類の葉たばこだよ。このうちバーレー種とオリエント種が、アメリカ向けの紙巻たばこの主な原料として使われていたんだけど、この2種類はその後栽培されなくなってね。屏東平原は日照時間が長くて気候も温暖、冬も雨が少ないし、あんまり風も吹かないから、秋に葉たばこを植えるのにちょうどいいんだよ。屏東の葉たばこ産地は「黄色種」という葉たばこを主に栽培しているんだけど、これも紙巻たばこの原料で、世界的に需要が大きいんだ。なくなってしまった葉たばこはそれなんだよ。
葉さん:僕の父は長寿と新楽園というたばこが大好きなんですよ。確かあれも黄色種の葉たばこで作られているんですよね。
工場長:そうそう、その黄色種で一番ランクの高い葉たばこが消えちゃったんだよ!「葉たばこのランク」のコーナーに一緒に行って、ちょっと見てみようか。
工場長:葉くん、見てごらん。葉たばこの葉っぱがついていた場所や、葉っぱの形、厚さでランクが分かれるんだ。
葉さん:ここに書いてある、天葉(てんぱ)…本葉(ほんぱ)…中葉(ちゅうは)…土葉(どは)…のことですね?
工場長:天葉は太陽に一番近い位置に生えていた葉のことで、土葉は地面に一番近い位置にあった葉のことなんだ。
葉さん:じゃあ、本葉(ほんぱ)と中葉は、その間にあった葉っぱですね!
工場長:その通り。葉たばこの葉っぱは厚さでも分類されるんだ。厚い葉は5級、薄い葉は4級に分類される。厚い葉の最高級品は「厚一等」と言われて、長さ50cm以上の「本葉」でなければならないし、油脂がたっぷりと含まれていて、欠けたり破れたりしていない葉っぱでなきゃだめなんだ。今回、なくなってしまった葉たばこはその最高級品なんだよ。
葉さん:葉たばこは収穫してからも、手間のかかる分類作業があるんですねえ!
工場長:そうなんだよ。毎年3月から6月にかけては農務課の繁忙期なんだ。日頃からまず先に、今年どこの農家の葉たばこが一番出来がいいか、うちの工場で作る標本用の葉として採集できるかどうか、それを知っておかなきゃならないんだ。採集した後は鑑定資格のある職員が、ランクごとに葉たばこの買い入れに使う標本を作るんだ。その標本は購買部が買い付けをする時の基準になるんだよ。
葉さん:今回、消えてしまった葉たばこは、どちらの葉たばこ農家から買い入れたんですか?
工場長:ええと、それはね…じゃあ、「耕作記録」のコーナーに行って、葉たばこ農家に詳しい指導員に聞いてみようか。
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葉さん:こんにちは。農務課の指導員の趙さんでしょうか。趙さんは葉たばこ農家に顔が広いって、工場長からうかがったんですけど。
指導員:まあ、そうですね。葉たばこ工場と農家は切っても切れない関係ですからね。全ての葉たばこ畑に担当の指導員がいて、定期的に見回りしたり、農家の耕作状況を見たりしていますね。それと、葉たばこの生育状況や病害虫の有無も報告しなければなりません。私が担当している地域なら、どの農家とも知り合いですよ。
葉さん:僕も子供の頃に、大人と一緒に畑で葉たばこの収穫をしたんですよ。近所7、8軒が1組になって、順番に収穫の手伝いをしてたんですけど、いつもワイワイにぎやかでしたね!
指導員:葉たばこの栽培は契約制ですから、農家は必ず台湾菸酒公司と契約して、栽培許可証をもらわなきゃいけないんです。契約して栽培さえすれば、間違いなく買い取ってもらえますから、農家の収入はかなり安定しているんです。
葉さん:安定した収入が得られるのはいいですね。だけど、親とか年配の親戚がよくぼやいてましたよ。葉たばこの栽培は恐ろしく手間がかかるし、身体もキツイって。
指導員:こちらの壁を見てください。葉たばこの栽培手順についてご紹介しているんですが、なんと十何段階もあるんですよ!特に収穫期は早朝5時、朝露が乾かないうちに起きて葉を摘まなければなりません。葉たばこは腐敗しやすいので、そのまま貯蔵はできませんから、夜、うちに帰ったらすぐさま「菸楼」という建物、葉たばこを乾燥させる作業をします。その日は朝から晩まで大忙しで、夜中になってからやっと休める感じなんですよ。
葉さん:本当にたいへんな仕事なんですねえ!ところで、あのなくなった葉たばこは、どの農家から買い入れたか、記録してあるんですか。買い入れはスムーズでしたか?
指導員:買い入れの記録を見てみましょうか。ああ、あの葉たばこは今年の標本採集農家から買ったものですね。誰が見ても一目で高品質だとわかるものだったから、何のトラブルもなかったですよ。
(工場内アナウンス:工場長、真空湿潤機(しんくうしつじゅんき)のところまでおいでください。)
工場長:何かわかったのかもしれないぞ。葉くん、行こう!
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工務課課長:工場長、今さっき、真空湿潤機のすぐ近くで黒い足跡(あしあと)を見つけたんですよ!
工場長:葉くん、こちらは工務課の課長だよ。工場の機械のことは全部、工務課にまかせてるんだ。
葉さん:あの、課長、なくなった葉たばこもこの真空湿潤機が使われたんでしょうか。この足跡はレールまで続いてるみたいですけど。それに、靴底に黒い油みたいなのがついてるようですね。
工務課課長:いや、使われてないね。この真空湿潤機は輸入品の葉たばこにしか使わないんだ。輸入品の葉たばこはぎゅうっと押しつぶされているから、桶に詰まった葉たばこを丸ごと真空湿潤機に入れるんだよ。上にある蒸気管から蒸気を入れて圧縮して、葉たばこに含まれる水分を増やすんだ。それから、桶の中の空気を抜いて真空にする。そうすると、ぺたっとくっついていた葉っぱがきれいにはがれるんだ。この工程の後で裁断機のところへ送り、次の加工を行うんだよ。なくなった葉たばこは屏東産のものだから、直接裁断機のところに送られるね。
葉さん:へんだなあ。この足跡は男物の靴なのか、女物なのか、見てもわかりませんね。ちょっと裁断機を見に行ってみましょうか。
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工場長:買い入れた葉たばこはまずトラックで工場内に運び込まれて、鑑定員が葉たばこの格付けをするんだ。それから、裁断機のところへ送られるんだよ。作業員が葉たばこをベルトコンベアに並べるんだけど、葉っぱを並べながら、品質の悪い葉を取り除くんだ。
作業員:そうそう。葉さん、機械の前の方に太い鉄のチェーンが6本あったでしょう?あの鉄のチェーンで葉っぱを平らにならすの。端に付いている丸いカッターで、葉っぱを三つに切り分けるのよ。
葉さん:あの、ここ何日かで知らない人をみかけませんでしたか?
作業員:私は臨時工(りんじこう)なの。毎年3月から6月の間だけ、この工場で働いているんだけど、ここの職員ならみんなよく知っているし。知らない人なんて見かけなかったわねえ。
葉さん:みんなマスクをしているのに、どうして知り合いだってわかるんですか?
作業員:まあねえ。このマスクは粉塵を防ぐために工場から支給されてるの。作業員は私ら何人かだけだから、お互いよく知ってるし。だけど、今日の午後、確かに除骨機のあたりからものすごく大きな音が聞こえてきたわね!
葉さん:そうですか!ありがとうございます。工場長、そっちへ行って話を聞いてみましょう!
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工場長:工務課課長、ちょっとこちらへ。さっき作業員さんから聞いたんですけどね。今日の午後、除骨機のあたりでへんな音がしたって。
工務課課長:ああ~そうですね。あの時は機械が故障しちゃって、たいへんだったんですよ。
葉さん:あの、すみません。機械のどこが壊れたんですか?
工務課課長:葉さん、それがね。中骨(ちゅうこつ)というのはつまり、葉たばこの葉脈のことで、葉脈を取り除いた後の葉のことを葉肉(ようにく)というんだ。除骨には作業工程が5段階あって、この除骨機でたばこの葉を、中骨と葉肉に分けて、砂とかの異物を取り除くことができる。風選機(ふうせんき)と分離機、振盪機(しんとうき)、三つの機械に分けるんだ。
葉さん:どうして分離させるんですか?
工務課課長:中骨と葉肉では風味が違うんだよ。中骨の方がニコチン含有量が多くて、味も濃く感じられるんだ。中骨と葉肉の配合を変えることで、消費者の好みで選べる、いろいろな味のたばこを提供できるのさ。除骨用の羽根で葉肉を切り抜いて、風選機で中骨と葉肉を分けて、分離機で異物を取り除く。どの工程でも中骨に付いている葉肉を徹底的に取り除く。キャットウォークの右側にあるこの機械が除骨用の刃が付いた機械だよ。除骨用の羽根が見えるかな?
葉さん:はい、見えます。交差した羽根が2組あるようですね。この除骨用の刃は回転するんですよね?
工務課課長:そうそう。モーターでこの2組の羽根を回転させて、分離をするんだよ。葉さん:キャットウォークの左側にある、赤い数字が出ているのは何の機械でしょうか?工務課課長:あれは分離機だよ。今日の午後、あの分離機が故障しちゃって、一部の作業に問題が出てしまってね。それに続く全ての作業を一旦停止しなくちゃならなくなったんだ。
葉さん:最後の工程は振盪機を使うんですよね?
工務課課長:そうだよ。キャットウォークに入って、ちょっと見てみようか。通路の終わり、左側にあるのが振盪機。通路沿いに別々のベルトコンベアで中骨と葉肉が次の工程に運ばれていくのが見えるよ。この通路はかなり狭いから、頭をぶつけないようにね。
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工場長:葉くん、さっき見たように、除骨機の最後の仕上げは「振盪機」なんだ。機械の内部は網状になっていて、振るいにかけて余分な葉のクズや粉を取り除くんだよ。この段階で、短すぎて利用価値のない中骨はふるい落とされる。
葉さん:工場長、葉たばこは葉肉と中骨、廃棄物の三つに分けられるわけですね?
工場長:そうそう!振盪機から出た細かな中骨や異物とかのゴミはベルトコンベアで工場の外に運び出される。それから、中骨は中骨乾燥機に、葉肉は再乾燥機に送られて、次の段階の加工工程に入るんだ。
葉さん:このベルトコンベアの近くにも黒い足跡がありますよ。この足跡をたどってみましょう!
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葉さん:黒い足跡はここで消えていますね。工場長、これは何をする機械ですか?
工場長:これは集塵機(しゅうじんき)といって、すごく大切な機械なんだ!葉たばこを加工する時には、除骨であれ、再度乾燥であれ、粉末状の粉やクズが大量に出るから、そうした粉塵やカスみたいなものは集塵機で全部処理するんだよ。
葉さん:大型の掃除機みたいなものですか?
工場長:葉くん、賢いなあ!加工の時は工場内が粉塵でいっぱいになるから、一日中工場で働いていると、服も靴も帽子も、全身がほこりまみれになちゃうんだよね。集塵機を使うと、工場内の粉塵を減らすことができるんだ。葉君、ほらあそこ、あのすみに誰かの服が落ちてるみたいだよ!
葉さん:この服は葉たばこのクズまみれですね。工場の仕事でついたように見えますけど。たぶん誰かが着替えた後に逃げたんじゃないかな?(工場内アナウンス:工場長、工務課の課長がお探しですので、中骨乾燥機のところまでおいでください。)
工場長:行こう!早く早く!
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工務課課長:工場長、さっき工務課の同僚が見つけたんですが、中骨乾燥機におかしな汚れがついているんですよ。手がかりになるでしょうか。
葉さん:葉たばこを盗んだ人が、うっかりつけた跡かもしれませんね。課長、この中骨乾燥機は何に使うんでしょうか?
工務課課長:中骨乾燥機は中骨加工の最終段階に使うんだ。中骨がカビたり、発酵しすぎたりしないように、中骨を梱包する前にこの乾燥機に入れて、じっくりと調整しながら水分量を減らすんだ。
葉さん:中骨を乾燥させた後はどこで梱包されるんですか?
工務課課長:乾燥が済んだら、作業員が中骨を梱包エリアに運んで、圧縮してから梱包する。200キロが1箱に梱包されるんだ。
葉さん:課長が今説明してくださったのは中骨の加工についてですよね。じゃあ、葉肉はどのように処理されるんでしょうか。
工務課課長:葉肉はベルトコンベアで直接葉肉の再乾燥機に運ばれるんだ。一緒に行って見てみようか。
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葉さん:課長、この葉肉再乾燥機はずいぶん長い機械ですねえ!
工務課課長:そうなんだよ。再乾燥工程というのは、葉肉をまた乾燥室に送って、乾燥、冷却、水分調節─三つの工程を経てから、葉肉の香りを出す作業のことなんだ。まず先に送風機で熱気をもった空気を送って葉肉を乾燥させる。それから、冷たい空気を入れて葉肉を冷却する。乾燥、冷却された葉肉は湿度がだいたい10%ぐらいになる。最後に葉肉の水分量を増やして、顧客が求める湿度にするんだ。
葉さん:課長、消えてしまった葉たばこは、この再乾燥工程で何かおかしなことはありませんでしたか?
工務課課長:特に何事もなかったけどねえ。今日の午後はちょうどこの再乾燥エリアの見回りをしていたし、キャットウォークでも工場内の作業状態を確認していたんだよ。今日はいつもより人手が多かったみたいで、梱包作業もあっという間に終わっちゃったよ!
葉さん:いつもより人が多い?それはちょっとへんですね。工場長、この葉たばこ工場の組織や運営について知りたいんですが。
工場長:よし、じゃあ「職人の心コーナー」に行こう。あそこならこの工場の組織についてよくわかると思うよ。
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工場長:この葉たばこ工場には、農務課、工務課、物料課、総務室という四大部門があるんだ。葉たばこは小さな種から収穫、調整まで、どの段階の作業も葉たばこの品質に影響を与えるんだよ。農務課は第一線で仕事をしていて、各地域の指導員が葉たばこ農家に必要な知識や技術を指導している。購買係は毎年葉たばこの標本を作る役目があるんだ。
葉さん:葉たばこ工場に出荷前の葉たばこの品質管理は、農務課が担当しているんですね。
工場長:そうだよ。葉たばこが農家から工場に届いたら、加工をするんだけど、それは工務課の仕事なんだ。さっき見た機械や、工場内のいろいろなパイプとか電線とかは全部、工務課が修理やメンテナンスをしている。昔、加工の仕事量が膨大だった頃は、工務課の職員がチームリーダーになって、臨時工をまとめて、皆で加工作業をしていたんだよ。
葉さん:僕は物料課の職員なんですが、加工作業が終わって、貯蔵する時は僕たち物料課の仕事です。
工場長:加工後だけじゃなくて、加工前の葉たばこの貯蔵も君たちの仕事だよ!
葉さん:そうですね!それから、加工された葉たばこは2、3年倉庫に置かれて発酵させるので、葉たばこに害虫がつかないように、燻蒸(くんじょう)しなくてはなりません。
工場長:総務室は葉たばこ工場の世話役だ。職員の福利厚生や工場の記念行事とかは、総務室が一手に引き受けているんだよ。じゃあ、総務室に行ってみようか。
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工場長:葉くん、総務室は職員の福利厚生に関する業務を行っているんだ。例えば、うちの葉たばこ工場には職員寮があってね。家賃もすごく安いんだよ。
葉さん:そう言えば、最初の頃は職員用の送迎バスもあったって聞きましたよ。前は工場内に娯楽室まであって、ピンポンとかビリヤードとかもできたって!
工場長:そうそう。それだけじゃないよ。託児所まであるんだよ。臨時工の多くが若いお母さんたちだからね。出勤してすぐに子供たちを託児所に預けて、退勤の時また迎えに行けばいいんだ。それと、いろいろな日用品を安く買える売店もあるんだよ。あっそうだ!みんな近くの店まで昼ご飯を買いにいくことも多いんだけどね、そしたらその食堂がだんだん有名になったんだよ。
葉さん:社員旅行はありますか?
工場長:もちろんさ!うちの工場は福利厚生がすごく充実してるんだよ。たいてい1年に3回も社員旅行があるし、家族も一緒に行けるんだ。
葉さん:へえ!本当にいいですね。おっと、なくなった葉たばこを探しに来たのを、うっかり忘れるところだった!あの消えた葉たばこの製造工程にはどの部門の人たちが関わっているんですか。特に梱包作業について知りたいんですが。
工場長:じゃあ、行ってみようか。キャットウォークから見た方がわかりやすいと思うから。
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工場長:葉くん、ここがキャットウォークの入口だよ。さあ、上がってみよう。あれ?顔色が真っ青だよ。大丈夫かい?
葉さん:このキャットウォークはちょっと高すぎませんか?ちょっと怖いなあ…。工務課の人たちはみんなここに上がるんですか?
工場長:ここだと工場内を見渡せるから、工務課の職員もキャットウォークから再乾燥工程をチェックするんだよ。
葉さん:工場長、僕もう足がすくんじゃって…。葉たばこの梱包について早いところ説明してもらえませんか。
工場長:キャットウォークから上れるこの踊場(おどりば)が葉たばこの投入口だ。再乾燥が完了した葉たばこはベルトコンベアに乗せられて、この投入口から箱詰めか樽詰めにするんだよ。
葉さん:工務課の課長が言うには、今日の午後は梱包エリアにいつもより多くの人がいたそうで、今日はあっという間に梱包作業が終わったらしいですよ。
工場長:そうなんだよ。それで、梱包作業もそろそろ終わりだって時に、除骨機から急にへんな音が出て、故障したんだ!
葉さん:梱包が済んだ葉たばこを運び出すために、わざと除骨機を故障させたんじゃないですかね!? 言わば敵をおびきだしてその虛をつくのです。
工場長:だとすれば、葉たばこ梱包機のあたりで、手がかりを探してみた方がいいだろうな!
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葉さん:工場長、見てください。この板には「正味重量400」と書いてありますね。それと今日の日付が…。
工場長:これはステンシルプレートのようだね、プレートは葉たばこを詰めた樽に出荷ラベルを印刷する道具です。うちの工場には2種類の梱包規格があるんだ。昔は丸い木桶を使って、400キロの葉たばこを詰めていたんだよ。最近では積み上げやすいように四角い箱を使って、1箱に200キロ詰めるんだ。
葉さん:プレートに「正味重量400」と書いてあるから、これは木桶に詰めた葉たばこのですね!
工場長:そうだね。木桶に詰めた葉たばこは、まず先に圧縮機に送られて、高密度に圧縮する。何度も圧縮してから蓋をしめるんだ。最後に出荷ラベルを印刷し、加工年月日や葉たばこのランク、重量がわかるようにしておくんだ。葉たばこの身分証明書のようなものだね。
葉さん:今、僕たちが探している葉たばこが入っている箱にも、そのプレートに記載された葉たばの情報をきっと印刷しているんでしょうね。工場長はどうして葉たばこがなくなっているのに気づいたんですか?
工場長:物料課の同僚が倉庫の在庫チェックをしている時に、あの葉たばこが倉庫に運び込まれていないことにやっと気がついたんだよ!
葉さん:僕が思った通りですよ。その葉たばこは倉庫に運ばれる前に、こっそり持ち出されたんでしょうね!じゃあ、加工工場からどうやって葉たばこを倉庫まで搬送しているんですか?
工場長:いつもフォークリフトを使っているよ。
葉さん:工場内の動線を熟知していて、倉庫の貯蔵状況もよくわかっている人でなければ盗み出せないでしょうね。工場長、今すぐ物料課に行きましょう。誰の仕業(しわざ)かわかりましたよ!
葉さん:僕の推理によれば、盗まれた葉たばこはまだ工場内にあります。物料課の課長、葉たばこを隠したのはあなたですね!なぜこんなことをしたんですか?
物料課課長:まさか葉さんに見破られるなんて…。この葉たばこ工場はもうすぐ閉鎖されるって聞いたの。私はこの工場が忘れられてしまうのが、耐えられなかった…。葉たばこを隠したのは私よ。葉たばこが消えれば、マスコミが来てニュースになるかもしれないって思ったの…。
葉さん:この工場は文化基地になるんです。そうしたら、展覧会をはじめ、いろいろな文化芸術活動がここで開催されます。歴史的建築物の保存と新しい文化遺産を兼ねた屏東葉たばこ工場が忘れられることは絶対にありませんよ!
工場長:そうだよ!ここは台湾の葉たばこ産業の歴史が記録されている、大切な産業遺産なんだから。大勢の屏東県民がこの工場で半生を過ごしたんだ、その記憶がここに残されている。近い将来、みんなが楽しめるいろいろなカルチャーイベントが開催されて、この葉たばこ工場に新しい命が吹き込まれるんだよ!みんなで力を合わせて、この工場の物語を紡(つむ)いでいこうじゃないか!